消化器科の病気ガイド
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急性すい炎

急性すい炎について

中川家の中川剛さん、次長課長の河本準一さん、チュートリアルの福田充徳さん。いずれも、テレビで見かけない日はないほどの売れっ子の芸人さんですが、この3人にはある意外な共通点があるのがお分かりですか?
この三人はいずれも、「ある日突然すい臓が溶ける 病気」、急性すい炎を発症したことがあります。働き盛りの年代が狙われやすく、年末年始やお花見、歓送迎会シーズンなどに急増するといわれている「急性すい炎」について今回ご紹介します。

急性すい炎セルフチェック

以下の項目に当てはまるものが無いかチェックしてみてください

・アルコールを良く飲む
・暴飲暴食が多い
・突然、みぞおちから背中に激しい腹痛
・背中に強い痛みがある
・エビのように丸く屈み込む姿勢で少し楽になる
・中性脂肪が1000mg以上
・高脂血症といわれたことがある
・腹痛や微熱がずっと続いている

ひとつでも当てはまる人は急性すい炎予備軍の可能性があるので注意してください。

急性すい炎ってなに?

すい臓は、ちょうど胃の後ろに隠れるようにして存在している15cm程の、オタマジャクシのような形をした臓器です。胃や腸と違って、ふだんあまり意識されませんが、食べ物の消化に欠かせない「すい液」という酵素を作る重要な働きを持っています。

通常、すい臓から分泌されたすい液は、十二指腸へと送られ「消化酵素」として働きます。
しかし何らかの理由で、すい液が大量に分泌されたり、出口が塞がれたりすると、すい液がスムーズに流れずに、すい臓内に溜まってしまいます。この溜まったすい液が、すい臓の中で消化酵素として働き「すい臓」自身を溶かしてしまうため、炎症がおきるのです。

早めに炎症を食い止められれば元の状態に戻りますが、ある程度進んでしまうと溶けてしまったすい臓の機能は戻らなくなります。重症化してしまうとICU(集中治療室)での治療が必要で、そのうち15%はそのまま亡くなってしまうといわれています。
また、厚生労働省の難治性膵炎調査研究班のデータによると、年間57,000人ほどが急性すい炎にり患しており、その数は20年前と比較して、2倍以上も増加し続けているのです。

原因は?

原因の8割は、アルコールの大量摂取といわれています。大量のアルコールの刺激ですい液が過剰分泌されて流れが悪くなるため、急激な腹痛を起こします。また、中年女性の場合は、脂肪分の多い洋菓子などの食べ過ぎでも発症するといわれています。

症状と治療

急性すい炎になると、突然腹痛が起こります。その痛みは耐え難いもので、特に背中側がひどく痛み、自然とエビのように屈み込む姿勢になるといわれています。炎症がひどい場合には、小腸や十二指腸までも動かなくなるため、嘔吐を伴うこともあります。治療は、絶食によってすい臓の負担をなくし、炎症を抑えていくことになります。軽症なら3日ぐらい、中等症であっても、1週間ぐらいで治りますが、重症になると血液透析や手術で患部を切除することもあり、命にかかわります。
一度発症すると再発しやすいのも特徴です。

急性すい炎を予防する!

沈黙の臓器、「すい臓」を守るために、日常生活で気を付けることを以下にまとめました。

お酒との付き合い方を考える

すい炎の最大のリスクは、長期間にわたるアルコールの過剰摂取。アルコールというと、つい肝臓へのダメージを考えがちですが、すい臓にとっても多大な負担となっていることを忘れてはいけません。逆に言うと、アルコールを制することで急性すい炎もある程度制することができるというわけです。

実際にすい炎になった人の飲酒習慣を調査した結果、「週に3日以上、1回1合以上」のアルコールを飲んでいたという人が、75%以上といわれています。日本酒一合のアルコール量は、ビールであれば中瓶1本分、ワインはグラス2杯、ウイスキーはシングル2杯、焼酎は一合に該当します。このくらいの量であれば、晩酌程度という方も多いのではないでしょうか。

体質によって個人差がありますが、少なくとも毎日飲んでいる方は、休肝日とともに、休すい日を設ける必要がありそうです。いずれにしても、ひとたびすい炎になれば、アルコールは厳禁となります。
特に晩酌は、なんとなく習慣で続けられがちですが、時にはメリハリを持って回数を減らすことも必要です。

高脂肪・高カロリー食を、低脂肪・低カロリー食に

アルコール以外の理由では、食べすぎ、脂っこい食事によって症状がでるケースも少なくありません。特に、クリームたっぷりのケーキなど脂肪分の多いデザートが引き金になることも良く知られています。脂肪分を一度に大量に摂取することで、すい臓機能に負担がかかるので、一回の食事で大量のクリームやケーキを摂取することは避け、なるべく食事の量を減らし、しっかり3食に分けて摂るようにします。揚げ物や炒め物、脂肪分の多いデザート類ばかりとらずに、ときには素材を生かした料理やフルーツなどをデザートとするように心がけましょう。

胆石・すい石の除去

胆石・すい石(すい臓にできるカルシウムを含む石)もまたすい炎の原因になります。
胆石やすい石が詰まってすい炎が起こっている場合には、除去手術が必要となります。通常、腹腔鏡や内視鏡による手術、あるいは体外から衝撃波を与えて石を砕く方法などで、除去することがおおく、開腹手術までいたりません。おなかが痛んだり発熱が続いたりするようであれば、胆石・すい石の可能性がありますので、その場合は一度内科を受診してみましょう。

まとめ

・急性すい炎は、働き盛りの世代に多く発症する
・重症化すると死亡することもある
・立っていられないほど激しい腹痛とともに発症する
・アルコールや脂肪分のある食事は控えめに
・腹痛や発熱が続く場合は、胆石・すい石の可能性も

アルコールやデザート、油ものを控えようとする時、我慢することが辛く感じられると思います。
しかし、毎日の積み重ねが10年後のあなたを作るのです。
ちょっとの我慢とメリハリ、それが結局は、長くお酒や食事を楽しめることにつながります。