消化器科の病気ガイド
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大腸ポリープ

大腸ポリープについて

ポリープとは、平たく言うと「イボ」のことです。鼻、喉頭(こうとう)、外耳、胃、小腸・大腸、子宮など、さまざまな部位にあらわれます。昔から「出物腫れ物ところ嫌わず」なんて言いますが、イボもいろんなところにできるわけで、大腸ポリープは大腸のイボです。単に出っ張っているだけなら、目に見える場所でもないのでどうでもよいのですが、困ったことに大腸ポリープには「ガン」のリスクが大きいです。会社の検診等で見つかった時慌てないためにも、大腸ポリープについて知っておきましょう。

小さなポリープにも要注意!

大腸ガンのほとんどは、ポリープから変化します。

そしてポリープの発生率は加齢とともに高くなります。

大腸ガンにかかる割合(罹患〔りかん〕率)は、50歳代から増加し始め、高齢になるほど高くなるので、ポリープの発生率と完全にリンクしているわけです。

ちなみに大腸ガンの罹患率、死亡率はともに男性の方が女性の約2倍と高く、結腸がんより直腸がんにおいて男女差が大きい傾向があるそうです。

とはいえ、「大腸ポリープは、すべてがガンになる!」のではなく、大部分はただのイボ(良性)のままで、ガンになりません。ガン化するのは腺腫性ポリープの一部です。ゆえに、大腸にできたポリープは、どのようなポリープなのかを詳しく検査する必要があります。

「小さいから大丈夫」なんて安心していてはいけません。

たとえば2008年に行われた第4回日本消化管学会で、次のような報告がなされています。

「内視鏡検査の際に見つけた5mm以下の小さな大腸ポリープを精査することなく放置することは、ガンの見逃しにつながる」(中目黒消化器クリニックの田淵正文医師)

田淵医師が手掛けた大腸内視鏡検査全3万5852回、9468人(男性6203人、女性3265人、平均年齢57.5歳)を対象としたデータによると…

検査時に発見した5mm以下のポリープを20分以上にわたり拡大観察し、腫瘍と思われた5mm以下の病変をすべて切除して組織学的検討を加えたところ、その結果腺腫が最も多く、全体の99%を占めたが、粘膜ガンが57個、粘膜下層まで浸潤したガンが3個(うち1000μm以上の浸潤ガンが1個)、粘膜下腫瘍(カルチノイド)が48個あったとのことです。
これはつまり
「単純計算すると、5mm以下の大腸ポリープをすべて放置した場合、年間約20個のガンの見逃しとなる可能性が示唆された。もちろん、すべての大腸ポリープを切除せよと言っているわけではないが、単に医療費を抑制するという観点から小さな大腸ポリープを一律に軽視していては、病変の観察が散漫になり、取り返しのつかないガンの見落としにつながりかねない」と田淵医師は警鐘を鳴らしています。

ポリープの段階で切除手術を

では、大腸ポリープが発見されたときはどうしたらいいのでしょうか。

NEJM誌2012年2月23日号に大変興味深い論文が発表されました。NEJM誌は、継続して発行されている医学雑誌のうちでは世界で最も長い歴史を誇り、また世界で最も広く読まれ、最もよく引用され、最も影響を与えている一般的な医学系定期刊行物です。

その論文によると、

「大腸内視鏡による腺腫性ポリープ切除は、その後の大腸ガン罹患率を下げるだけでなく、大腸ガン死亡も予防する」そうです。

もうちょっと詳しくご紹介すると…

「腺腫性ポリープ切除を受けた人々を15.8年(中央値、最長23年)追跡し、死亡登録(National Death Index)を用いて生存を確認、死亡者については死因を特定。

内視鏡的に腺腫の切除を受けた2602人のうち、1246人(48%)が追跡期間中に死亡していた。このうち12人が大腸ガン死亡だった。

同じ人数の一般集団に予測される大腸ガン死亡は25.4人であったため、標準化死亡率比は0.47(95%信頼区間0.26-0.80)となり、大腸内視鏡による腺腫性ポリープ切除は、大腸ガン死亡を53%減らすことが示された」のだそうです。

53%も減らせるんです。すごいです。

大腸ガンは早い時期に発見すれば、内視鏡的切除や外科療法により完全に治すことができるガンですが、ポリープの段階で切除すればさらに確実というわけです。

内視鏡検査の辛さには個人差が

大腸ポリープの発見には、大腸内視鏡検査が欠かせません。この検査は、検便で潜血が見つかって受ける人が多いようですが、その「辛さ」には個人差があります。

たとえば40代の既婚女性・Mさんの場合。

「とにかく辛かった」の一言ですと話してくださいました。

「まず前処置のマグコロールP。 味はまずいアイソトニック飲料のようでしたが、どうにか飲みました。でも胃がムカムカして1回嘔吐してしまいました。私の腸は少し長いタイプだったようで、内視鏡が奥に到達するまで、何度も呻いてしまいました。大変でしたが、なんとか頑張って終了しました。病院でしばらく横になって帰宅するつもりでしたが、お腹の痛みと吐き気で電車に乗る前にくじけて、駅ビル内のベンチでダウン。嘔吐4回した末に、病院に電話して戻りました」

Mさんのような方もおられれば、「ぜんぜん平気でした」という人もいます。

自分はどのタイプか、こればかりは経験してみなければ分からないのがやっかいです。

大腸ポリープのリスク

直系の親族に同じ病気の人がいるという家族歴は、リスク要因になります。特に、家族性大腸腺腫症と遺伝性非ポリポーシス性大腸ガン家系は、確立した大腸ガンのリスク要因とされています。

また生活習慣では、過体重と肥満で結腸がんリスクが高くなることが確実とされています。また、飲酒や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)は、おそらく確実な大腸ガンリスクとされています。

日本人を対象にした疫学研究を系統的に総括した論文(2006年)では、喫煙習慣は、日本人では大腸ガンリスクを上昇させる可能性があると結論しています。

家族に大腸ガンになった人がいる場合には、肥満、飲酒、加工肉、喫煙は避けることをおススメします。

まとめ

大腸ポリープは、大腸ガンに移行するリスクが心配です。

・ガン化するポリープは、腺腫性ポリープというタイプ
・小さなポリープでも見落としはガン化のリスク大
・腺腫性ポリープ切除手術は、大腸ガンの死亡率を53%も減らす
・予防には、肥満、飲酒、加工肉、喫煙を避けること

この4点を忘れないようしましょう。