消化器科の病気ガイド
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十二指腸潰瘍

十二指腸潰瘍について

「あ~、お腹が痛い」と思ったとき、どこを思い浮かべますか?「最近ストレスが多いから胃かなあ」と思ったり、「便秘してるから腸が張って苦しいのかなあ」等々。思い浮かべるのは、胃か腸がほとんどではないでしょうか。「腹痛と言えば胃か腸でしょう」という声が聞こえてきそうですが、もうひとつ忘れているものがあります。胃と腸のあいだにあるもの、それが十二指腸の存在です。実は、十二指腸は小さいながらも消化を助けるための重要な器官なんです。しかし最近、この十二指腸の潰瘍からくる痛みを訴える方も少なくありません。知っているようで知らない「十二指腸潰瘍」について考えていきましょう。

十二指腸潰瘍チェックリスト

「あなたの十二指腸・・・大丈夫?」

・空腹時に、お腹がきりきりとが痛むことがある
・みぞおちの右側が痛むことがある
・胸焼けがあったり、げっぷをすることが多い
・なんとなく、胃のあたりがすっきりしない
・最近吐き気や、食欲不振が気になる
・下痢することが多くなった

ひとつ以上当てはまった方は要注意です。十二指腸潰瘍の可能性が有ります。

十二指腸って何をするところ?

十二指腸は、胃の終わり部分から小腸の先端までの間にあります。ちょうど胃と腸を結ぶ存在といえるでしょう。食べ物は、胃で消化されたのち十二指腸まで流れていきます。十二指腸では、消化物をさらに細かく消化し、小腸で消化吸収されやすくします。

ちなみに十二指腸というちょっと変わった名前は、指12本を横に並べた長さからきていると言われています。実際には十二指腸は25~30センチくらいなので、かなり長めの指で12本分を数えたことになります。

十二指腸と胃潰瘍の違い

十二指腸とともによく聞くのが胃潰瘍です。場所が近いだけに症状も似ていて混同されやすいようです。

胃潰瘍

40~50代の働き盛りの世代に多く発生します。食後や満腹時に痛みやすい傾向があります。痛む場所は、みぞおちから「左」側にかけて痛む事が多いようです。食べ物を摂ると痛みが出るのが特徴です。

十二指腸潰瘍

20~40歳代の比較的若い世代に多く発生しします。お腹がペコペコになった空腹時や、早朝痛みが出ることが多いです。みぞおちから「右」側にかけえ痛むことが多いようです。食べ物を摂ると胃酸が中和されるため、痛みが和らぐのが特徴です。
胃潰瘍と十二指腸潰瘍は、「痛みの出る場所」と「痛みの出る時間帯」が違います。特に、食前に痛むか食後に痛むかどうかが見分けのポイントです。

ほうっておくとどうなる?

十二指腸潰瘍は、十二指腸に炎症が起こり潰瘍を形成し、それが徐々に強くなり最終的には、壁に穴があいてしまう病気です。痛みの強さと潰瘍の程度にはあまり関係がないようで、潰瘍が進行していても強い痛みを感じない方もいるようです。しかし放置すれば潰瘍は徐々に深くなり、十二指腸に穴が空いてしまう「穿孔」という状態が起こります。こうなると大変です。強い腹痛を引き起こし”腹膜炎”という状態になります。胃液や腸液が消化管の外に漏れ出し、重い炎症を起こすので緊急手術が必要となります。

原因は、あの菌にあった?!

十二指腸潰瘍には、以下のような原因があります。

ヘリコバクター・ ピロリ菌の感染

十二指腸潰瘍の約8割が、ヘリコバクター・ピロリ菌によるものです。十二指腸潰瘍だけでなく、胃炎や十二指腸炎はもちろん、胃潰瘍・胃がんまでもが、ピロリ菌と深い関係があります。そうピロリ菌とは、その可愛らしい名前とは裏腹に、胃・十二指腸の健康を脅かす諸悪の根源だったのです。

ピロリ菌は、口から入って感染し強酸性の胃の中に住み着く特殊な菌です。日本人のおよそ半数が感染していると言われ、とくに50代以上になると7割もの人が感染しているとのこと。ピロリ菌の感染の有無は、血液検査や呼気検査などでわかります。最近では健康診断のオプションとしても増えてきているので手軽に受けられますよ。感染率が高いので、症状がなくても一度受けておくことをおすすめします。

肉体的、精神的ストレス

ピロリ菌の次に多い原因が、ストレスです。突然の事故や退職、家族の病気などの強いストレスが、急性の十二指腸潰瘍を引き起こすことも。また、ストレスというと精神的な面ばかりを考えがちですが、肉体的ストレスも同様です。すなわち、トウガラシなど刺激の強い香辛料や、熱過ぎたり冷たすぎる飲食物の摂取、睡眠不足やオーバーワークなどによって十二指腸潰瘍が引き起こされることもあります。

・痛み止めやステロイドなどの長期にわたる服用
痛み止めやステロイドなどが胃を荒らし、結果として胃潰瘍や十二指腸潰瘍を招くことがあります。治療目的や医師に指示されていないにもかかわらず、なんとなく痛み止めを使い続けるのはやめたほうが賢明でしょう。

十二指腸潰瘍の予防

ピロリ菌除菌

感染している場合は、抗生物質を1~2週間服用して原因となるピロリ菌が除去できれば治ります。ただし慢性的にピロリ菌に感染していた方は、除菌後も再発することが多いので、長期的な取り組みが必要になります。症状が出ていなくても、ピロリ菌を除菌しておくことが大切です。

食事の見直し

十二指腸潰瘍の食事の基本は、胃酸を抑えて傷ついた粘膜を刺激しないことに尽きます。
1.良質なたんぱく質を十分に。
卵、乳製品、白身魚、脂肪の少ない肉、豆腐などを積極的に摂りましょう。

2.消化に負担が少ないものを。
胃での滞留時間が長いものほど、消化管に負担をかけます。
例えば卵ならば、ゆで卵より生卵。お肉ならばバラ肉よりヒレ肉。いもなら、さつまいもよりも里芋。マグロならトロよりも赤み。豆腐ならば、揚げ出し豆腐よりもやっこ。同じ種類でも脂が少ないものを選ぶのがコツです。

3.香辛料・香辛食品などは刺激が強いので控えめに。
 刺激物・・・・・・・・・・・・カレー、わさび、唐辛子など
 アルコール・・・・・・・・・・度数の高い日本酒や焼酎、ウイスキーなど
 カフェイン・・・・・・・・・・コーヒーだけでなく濃い紅茶、濃い緑茶も要注意
 ニコチン・・・・・・・・・・・たばこ
 味付け・・・・・・・・・・・・塩味などが極端濃い味付けはNG
 温度による刺激・・・・・・・・冷たいジュースや、逆にアツアツの味噌汁なども危険

まとめ

知ってるようで知らない十二指腸潰瘍の実体・・・いかがでしたか?ピロリ菌の感染が大きな原因を占めていることに驚いた方も多いのではないでしょうか。しかし逆に言うと、これまでわからなかった治療法が確立されてきたとも言えます。胃と腸に挟まれて、普段なかなか意識していない十二指腸。この機会にいたわってあげましょう。

・十二指腸潰瘍は、空腹時に痛みが出る
・十二指腸潰瘍は右側に、胃潰瘍は左側に痛みが出る
・放置すると、腹膜炎という重大な症状を引き起こすことも
・原因の多くがピロリ菌の感染による
・ピロリ菌除菌により症状がかなり改善する
・刺激物や繊維質・硬いものを食べ過ぎない