消化器科の病気ガイド
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胃潰瘍

胃潰瘍について

いやなことが起きた時、胃のあたりがズキンと痛み、「あ、今胃に穴があいたかも・・・」と思ったことはありませんか?ストレスに反応して、胃が荒れていくのが「胃潰瘍」と長年思われてきましたが、実は「ストレスはあまり関係ない」ことが、近年明らかになっています。今回は「胃潰瘍」についてお話します。

最大の要因は「ピロリ菌」感染

胃の粘膜が傷つきえぐれ、痛む病気が「胃潰瘍」です。
十二指腸潰瘍と合わせて「消化性潰瘍」と呼ぶこともあります。

また、胃壁が酸やペプシンなどによって障害され、欠損した病態であることから
「転倒したときに肘や膝にできる擦り傷が胃壁にできているような状態です」という医師もいます。

日本では、欧米に比べて胃潰瘍の割合が高いのですが、近年は生活様式の欧米化により
十二指腸潰瘍が増加傾向にあるそうです。
男女比では、胃潰瘍、十二指腸潰瘍とも男性に多く、胃潰瘍は40~50歳代、
十二指腸潰瘍は20~40歳代に多くみられます。

さらに最近は、心血管系や腰痛などに処方される薬剤による影響で、
高齢者の胃潰瘍も増加傾向にあります。

最大の要因は「ピロリ菌」

ピロリ菌(正式名:ヘリコバクター・ピロリ)に感染していると、胃潰瘍を発症しやすいことがわかってきました。ピロリ菌感染は胃炎や胃・十二指腸潰瘍だけでなく、胃がんを生じる重大の因子です。

潰瘍については、腰痛症、関節リウマチで処方される非ステロイド系消炎鎮痛剤、脳梗塞や心筋梗塞の予防に用いられるバファリンなどから生じることもありますが、
ストレスは、今ではあまり重要視されなくなりました

ピロリ菌と胃・十二指腸潰瘍の関係は1990年代に広く認められるようになったものです。
胃潰瘍の90%以上、十二指腸潰瘍ではほぼ100%の患者でピロリ菌感染がみられるといいます。
ただし、ピロリ菌感染が即、潰瘍を起こすのではありません。ピロリ菌感染によって胃炎が起こり、潰瘍ができやすくなったり、治りにくくなったりすると考えられるのだそうです。

患者の9割がピロリ菌感染者であるという事実に加え、ピロリ菌を除菌すると再発を劇的に減らせることがわかったおかげで、欧米では1994年から除菌が本格的に行われるようになったそうです。

日本でも2000年に潰瘍に対するピロリ菌除菌が保険適用となり、今やピロリ菌感染のある
胃・十二指腸潰瘍の場合、第一に行うべき治療となっています。

胃の不快は胃潰瘍を疑うべし

胃潰瘍の症状は以下の物があります。

〇げっぷ
〇悪心
〇胸やけ
〇もたれ感
〇食欲不振
〇背部痛
など。

「食後の疼痛は胃潰瘍、空腹時の疼痛は十二指腸潰瘍」ともいわれます。
また、病状が悪化したケースでは、時に吐血や下血、黒色便などの消化管出血症状を認めることもあります。

診断は、胃X線検査(消化管造影検査)と上部消化管内視鏡検査、およびピロリ菌検査によって行います。

胃X線検査は、胃癌検診でなじみの深い検査法です。

バリウムを服用して、胃の変形や凹凸を観察する、X線を用いて撮影する検査です。
活動期(潰瘍ができたばかりの時期)の潰瘍は胃壁の外に突出したバリウムの溜まり像(ニッシェと呼びます)として描出され、瘢痕期(潰瘍が治りかけの時期)の潰瘍はひきつれ像や伸展不良像として観察されます。

上部消化管内視鏡検査は、細い管に超小型カメラがついた内視鏡を口もしくは鼻から入れ、モニターで胃や十二指腸の状態を確認する検査です。

潰瘍の進行度や深さの診断、他の病気との区別をつけると同時に、検査のために組織をとったり、出血を止めるための処置などを行うこともあります。

ピロリ菌検査は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療方針を決めるために欠かせない検査です。
方法は大きく分けて2種類あり、ひとつは内視鏡検査の時に胃粘膜組織を採取し、それを調べる方法。もうひとつは血液、尿、便、吐く息の中にピロリ菌に関係した物質があるかどうかを調べる方法です。これらの中からひとつの方法を選んで診断や、治療効果の判定を行います。

検査をするうえで特に大切なのは、胃潰瘍と胃がんを見分けることです。

良性の胃潰瘍と悪性の胃がんは、内視鏡所見でおおよそ区別がつきますが、確実に見分けるには、生検を行って病理検査をしなくてはなりません。
胃潰瘍の先には、がんのリスクが潜んでいますので早めに受診するようにしてください。

治療の中心はピロリ菌除去

治療は薬物療法を行います。
胃酸を抑える抗潰瘍薬の投与で、潰瘍はほぼ治癒します。

ただし現在は、潰瘍再発の主たる原因がピロリ菌感染であることが判明したため、
胃酸を抑える治療は対症療法であると考えられています。

そこで実行されているのが、「ヘリコバクターピロリ除菌療法」です。
ピロリ菌を除菌することで潰瘍再発が劇的に少なくなることから、
除菌が潰瘍治療の根本的治療と位置づけられています。

除菌しないと、1年以内に60%以上が再発するというデータもあります。
除菌治療も、抗生剤と酸分泌抑制剤を服用する薬物療法です。

1週間内服し、約8週間後に尿素呼気試験で除菌の成否を判定するのが一般的です。

ただし、ピロリ菌の中には耐性菌といって抗生剤の効かない菌もみられ、除菌成功率は約80%と
簡単には除菌できないケースもあるようです。

除菌の副作用には、下痢、味覚異常、発疹などがあり、軽症の場合は内服を継続しますが、まれに日常生活に支障をきたし中止を余儀なくされることもあります。
他に腎障害や薬剤アレルギーのある方、妊産婦などは除菌治療は控えるべきと言われています。

まとめ

◎胃の粘膜が傷つきえぐれ、痛む病気=胃潰瘍。
 十二指腸潰瘍と合わせて、消化性潰瘍と呼ばれることも。
◎最大の要因は「ピロリ菌」感染
◎ピロリ菌は胃がんの原因にもなる
◎胃潰瘍検査で重要なのは胃がんとの鑑別
◎治療は潰瘍をなくすよりも、ピロリ菌除去が大切

ピロリ菌除去は、胃がんにならないためにも大切です。
機会が合ったらぜひ、除去することをおススメします。