消化器科の病気ガイド
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肝臓がん

肝臓がんについて

今回は「肝臓ガン」についてご紹介します。肝臓ガンといえば、肝臓の細胞そのものにガンができる「肝細胞ガン」が代表的です。他にも、肝臓と十二指腸をつなぐ胆管(たんかん)の細胞にガンができる「胆管細胞ガン」などがありますが、肝臓ガンの約95%は肝細胞ガンとなっていて、一般的にも肝臓ガンといえば肝細胞ガンのことを指しますので、ここでも肝細胞ガンについてご紹介していきます。

肝臓ガンの統計

肝臓ガンは、他のガンに比べてテレビなどで特集される機会が少ないこともあり、
あまり考えたことがない、という人が多いのですが、実は肝臓ガンの患者数は多く
2008年のがん統計によると、肝臓ガンによる死亡者数は、肺ガン・胃ガン・大腸ガンに次いで4位となっています。

さらにその内訳を見てみましょう。厚生労働省の「平成20年人口動態統計」によると、
肝臓ガンによる死亡者33,665人のうち、22,332人が男性です。
これに対して女性は11,333人ですから、男女ではほぼ2倍もの死亡者数の差があります。

 つまり肝臓ガンは「特に男性が注意すべきガン」と言えます。

肝臓ガン治療の現状

肝臓ガンは、残念ながら、かなり「予後が悪い」という部類に入るガンです。
「全がん協部位別臨床病気別5年相対生存率(1997‐2000年)」のデータによると、
肝臓ガンは1期で発見したとしても、5年生存率は54.6%。2期では43.1%、3期では24.8%、
そして4期では9.4%となっており、いずれのステージにおいても、他のガンと比較して、
生存率はかなり低い方だといえるでしょう。

ですが肝臓ガンは、ここ10年で治療法が大きく進歩しているガンともいえます。
一般的な外科手術だけでなく、以下のような治療法も現れました。

肝動脈塞栓療法

ガン細胞に血液を送れないようにしてガン細胞を酸欠死させる療法。

エタノール注入療法

肝臓に針を刺して、ガンを狙って純度がほぼ100%のアルコールを注入し、
ガン細胞を変質・壊死させる療法。

ラジオ波凝固療法」および「マイクロ波凝固療法

肝臓に電磁波のついた針を刺して、熱を加えてガン細胞を壊死させる療法。

 これらの治療法も、それぞれがかなりの成果をあげてきており、
 肝臓ガンの生存率は少しずつではありますが、確実に上昇してきています。

 現状ではまだまだ厳しいガンといえますが、今後の治療法の進歩には期待が持てそうですね。

肝臓ガンは気付きにくい!?

肝臓ガンについては、この「自己チェック」がほぼ不可能です。
なぜなら、肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、めったなことでは症状を出さない臓器だからです。

肝臓という臓器は、人にたとえるなら「素直で文句も言わない、とてもいい子、優等生」で
「いい子、優等生なんだったら問題ないんじゃ?」と思われるかもしれませんが
「いい子、優等生ほど、爆発した時が怖い」のです。

肝臓は、普段はただ黙々と働いて、さらに多少調子が悪くなっても、文句を言わないので
自覚症状になるような不調も出さず、ただひたすらに頑張ってしまいます。
そのため頑張りに頑張りぬいた肝臓が、ついに耐え切れず、いつもの働きができなくなった時、
つまり何らかの自覚症状が出た時には、もうすでに肝臓そのものがボロボロになっている場合があります。

 だから肝臓ガンも、自覚症状が出た時点ではかなり進行しているケースがほとんどです。

 実際に、がん研究振興財団が「いろいろなガンによくでる症状」として、
各ガンの初期症状を挙げているものがあるのですが、そこでも肝臓ガンの初期症状についての記載はありません。それほど「自分では気付けない」とガンと言えます。

 ですから肝臓ガンの場合は、「ガンになってから自己チェックで気付く方法」を探すよりも、
原因を知ってそのリスクを避けること、そして予防法を知ることが大切になってきます。

肝臓ガンの原因は?

肝臓ガンのもっとも大きな原因となるのが、「肝障害」です。
 なんらかの肝障害があった後に、それがガン化していくというケースがほとんどです。
 その中でも怖いのが「B型・C型の肝炎ウイルス」で
肝炎といえばA型・B型・C型がありますが、A型については一過性ということもあり、
肝臓にかける負担もさほど長期間継続するものではありません。

ですがB型・C型については、持続的に肝臓に負担をかけ続けますから、
これは非常にリスクが高いものです。
どのくらいリスクが高いかというと
平成19年の日本肝臓学会の報告によると、肝臓ガンになった人のうち、約9割の人に
肝炎ウイルス感染があったそうです。B型ウイルス性肝炎からの肝臓ガンは17%、そしてC型ウイルス性肝炎からの肝臓ガンは72%にも及びます。

あなたは自分が、B型・C型肝炎ウイルスを保有しているかいないか、ご存知でしょうか?
もし「知らない」ということであれば、一度検査をして知っておくことをおすすめします。

B型肝炎ウイルスは、母子感染および、感染者との性交渉による感染が特に多くなっています。
また、輸血による感染については、チェック体制が昔よりもはるかに整い、感染の危険度は
下がってきていますが、今でも肝炎ウイルスがそのチェックをすり抜けてしまうケースもまれにあるため、可能性はゼロではありません。
また、C型肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルスに比べて感染力が弱いので、母子感染の可能性はとても低いのですが、性交渉や輸血などについては感染リスクがありますので安心はできません。

さて、「肝臓ガン患者の約9割は肝炎ウイルスに感染している人」
という話が先ほど出ましたが、残りの約1割はどうなっているでしょうか?
「残りの1割」の中で、もっとも大きな原因となっているのは「飲酒」です。
飲酒によって体内にアルコールが入ると、肝臓はいつも以上のパワーを出して、
それを分解しなければいけません。つまり毎日飲酒を続けるということは、
毎日肝臓をフルパワーで稼動させるということになります。

毎日肝臓をフルパワーで稼動させることで肝臓が過労状態になり、
やがてアルコール性肝障害となってしまい、さらにその後はガン化してしまうというわけです。

肝臓ガンを予防するには?

では肝臓ガンを予防するにはどうしたらいいのでしょうか?
まず「肝炎の感染」を予防することが大切ですが、さすがに母子感染や輸血による感染などは、自分の努力では防げません。ですが、性交渉による感染は防げます。
性交渉時の肝炎感染を防ぐのにもっとも効果的なのは、「性交渉時にコンドームを使う」ということです。

最近は避妊のために女性がピルを服用し、コンドームを使わないケースも増えていますが、
コンドームなしの避妊方法は「たとえ避妊はできても、その他の病気などのリスクがとても高い」
と認識しておく必要があります。

そして飲酒による肝障害を防ぐには、やはり「休肝日」を作ることが何より大切です。
休肝日の理想は週三日。つまり「飲むのは一日おき」ぐらいがちょうどいい、ということです。
それが無理という人も、最低でも一週間に一日は、飲まない日を作りましょう。
また、飲む日も「今日は休肝日じゃないからジャンジャン飲む」なんてことはやめて、飲酒はあくまで適量を守って下さい。普通に飲める人でも、一日あたり日本酒なら2合、ビールならビン2本以内まで、お酒に弱い人はそれ以下の量に抑えることが大切です。

また、「肝臓をいたわる食事」を心がけることも効果的で、もっともおすすめなのは「しじみ」です。
しじみに豊富に含まれるタウリンやオチアミンは、肝臓の解毒作用を高めてくれます。
乾燥タイプのしじみも販売されているので、それを味噌汁などに入れるのが手軽でオススメです。

他にも、肝機能の活性化&血液中のアルコール分解を手伝ってくれるビタミンCが豊富な野菜類や果物類、良質なたんぱく質で肝臓を補修してくれる乳製品などを積極的に摂取しましょう。