消化器科の病気ガイド
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すい臓がん

すい臓がんについて

2010年夏、OLのSさん(48歳)は、左腹部に痛みを感じ、会社近くの胃腸消化器クリニックを受診しました。実はSさんは、以前すい炎を患った経験があるため、今度もすい炎だろうと思ったのです。でも画像診断の結果について話す医師の表情は暗く「すい臓ガンの疑いがあります。すぐに入院して手術しましょう」とのこと。Sさんは頭の中がまっ白になってしまったそうです。「すい臓ガンって、自覚症状がなくて、見つかったときには手遅れの場合が多いって聞きますよね。私ももうダメかなって…だからやりかけの仕事とかも整理して、入院前日は仲の良い友だちとお別れのディナーを食べて、みんなで泣きました」(Sさん)しかし、手術してみたところ、ガンではなく「慢性すい炎」であることが判明しすい臓を切除されることなく、退院したのでした。「慢性すい炎ってのも、決して喜ばしいことではないですけどね。でもガンじゃなかったんで、命拾いした感じです」 と振り返るSさんはその夏の終わりに、ヒマワリ畑で満面の笑顔を見せる自分の写真をカードにし、友人知人みんなに「元気です!」と暑中見舞いを送ったそうです。この例によく表れていますが、すい臓ガンは発見が困難で、なおかつ発見されたならばすでに絶望的な場合も多い病気です。ガンの中でも、ある意味もっとも手強いと呼ばれている「すい臓ガン」について、今回はご紹介します。

発見されたときは手遅れの可能性も

すい臓ガンは、早期に発見するのが難しいガンの代表格で、発見されたときには
すでに手の施しようがないことがほとんどとも言われています。
それでも自分でもわかりそうな症状をあげるとするならば、以下の物があります。

背中やお腹の痛みが激しい時がある。

ガンが周りの神経を刺激し、浸潤しているために発生します。すい臓ガンの場合は周辺の臓器にもかかわってくるので、神経が通っている背中や十二指腸、胃にも痛みがおきるのです。

食欲不振に陥る

お腹が常に痛んだり、下痢が止まらなくなります。すい臓ガンによって、
すい臓の機能が低下およびほとんど機能しなくなるために発生します。

「激しい痛み」や「下痢が止まらない」という症状があったら、すい臓がんでなくても
誰でも病院に行かざるを得なくなるでしょうし、「これはただごとではない」と危機感を抱くはずです。
こんな症状があったら、どうか我慢せずに病院へ行ってください。

ちなみに、アップルの創始者で昨年亡くなったスティーブ・ジョブス氏は2003年にすい臓ガンが発見されました。幸い、治療できる症例だったらしいのですが、なんと彼は手術を拒否し、
絶対菜食、ハリ治療、ハーブ療法、心霊治療などをネットで探し、民間療法などを用いて完治を図ろうとしていたそうで、ガンを悪化させてしまったそうです。
患者それぞれの意志は尊重すべきですが、もったいないと感じる方も多いのではないでしょうか。

すい臓がんの危険因子

すい臓がんになりやすい危険因子には以下のような事柄がありますので、覚えておきましょう。

◎嗜好品:喫煙 飲酒 コーヒー
◎食生活: 肉類 高カロリー食 高脂肪食 砂糖
◎既往歴:糖尿病 慢性膵炎 遺伝性膵炎 膵石症 胃切除後 胆摘後 歯周病 
◎肥満:BMI値が高い
◎職業:化学物質を被曝するような仕事
◎家族歴:膵ガン 遺伝性膵ガン症候群

これらにあてはまる人は、日頃から注意してください。
(ただ、どのような人に多いのかが判っても、早期発見のための有効な検査方法はないのが現状ではあります)

● 発見しにくく、進行しやすい
では、ガンになってしまった場合、どうしたらいいのでしょう?

すい臓ガンは、ステージ3、ステージ4と進行した段階で発見されることが多いのですが、その理由は、体の奥にある臓器で異変を発見しにくいこともありますが、すい臓ガン自体の問題もあります。

通常、ガンは大きくなると転移が起きやすくなりますが、すい臓ガンは
かなり早い時期から遠隔転移を起こしてしまうのです。

さらに、膵臓ガンには周囲の組織に浸潤しやすく、
「あちこちに手足を伸ばすように広がっていく」という困った性質もあります。
こういったガンは、境界が不明瞭なので、手術で切除したつもりでも、思わぬところに
手足を伸ばしていて、取り残すことになりかねません。
つまり、すい臓ガンは、手術可能な早期の段階で発見するのが難しく、たとえ切除手術ができたとしても、根治手術をしそこなうケースが少なくないと言えます。

すい臓ガンは、根治的治療となると切除手術しかありませんが、切除手術は難易度が高く、専門性を要求されます。
手術を受けるのであれば、できるだけ「すい臓ガン手術の症例数の多い施設」で受けるようにしてください。

しかし、手術が可能なケースは、残念ながらさほど多くはありません。
発見された時点で、手術はできないと診断されることのほうが多いのです。手
術できないすい臓ガンには「ジェムザール」という薬を使う化学治療が標準的ですが、
さらに効果のある治療法の研究は着々と進んでいるそうです。
そのほか、腹腔鏡下での高度な手術法や、日本が世界に先駆けて行っている「重粒子線治療」も進歩しており、すい臓ガンの生存率は近年延びています。

根治は不可能と呼ばれた病でも、医学の発達によって治療が可能になってきた場合は多くあります。近い将来、このすい臓ガンにおいても同じことが起きることを、是非期待したいですね。

まとめ

・すい臓がんは初期段階では自覚症状がほとんどない
・どのような人がなりやすいのかは判っていても、早期発見のための有効な検査法はない
・根治には手術しかないが、むずかしい

すい臓ガンは早期発見が難しく、手術ができるケースでも、その難易度は高く、治しにくいのが特徴で、最もやっかいなガンだと言えます。
ただし、化学療法、腹腔鏡下での手術、重粒子線治療など、最先端の医療は日々進化しており、
生存率も延びているので、悲観的になりすぎる必要はありません。