消化器科の病気ガイド
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潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎について

2007年9月12日、当時第90代内閣総理大臣であった、安倍晋三首相は、持病の悪化を理由に就任から1年で退陣を表明しました。当時、安倍元首相は退陣に際して自らの病名を明らかにしなかったので、「体調不良で首相を放り出すなんて」と各誌が一斉に騒ぎ立てました。ところが、2011年に初めて安倍元首相は、自分の病気を「潰瘍(かいよう)性大腸炎」であると告白したのです。厚生労働省が認定する難病でもある「潰瘍性大腸炎」は、いまだに謎の多い病気であります。今初めて耳にした、という方も少なくないでしょう。
今回はこの「潰瘍性大腸炎」についてお話します。

緑内障

潰瘍性大腸炎の原因は、「免疫系統の勘違い」

「潰瘍性大腸炎」とは、簡単に言うと、大腸に潰瘍ができて炎症が起きる病気です。
潰瘍ができてしまう理由は「免疫」と言われており、例えば花粉症のある人は、くしゃみや涙などの症状が出ますが、それは免疫系統が花粉を「敵」とみなすために起きてしまう現象です。
花粉を敵とみなさない免疫系統を持っている人は、花粉症を発症しません。
潰瘍性大腸炎の場合は、免疫系統が「自分の腸の壁」を敵であると勘違いしてしまい、攻撃してしまうことで、腸の壁が常に傷つき潰瘍ができてしまうのです。

この病気の厄介なところは、免疫系統の勘違いによって起きているので、基本的には「治らない」という点です。残念ながら現時点では薬で症状を抑えるしか無く、また、何故このような勘違いが起きるかもわかっていません。

「平成21年度特定疾患医療受給者証交付件数」によると、現在全国で約11万人の患者がおり、毎年、8000人以上患者が増え続けています。男女どちらにも、あらゆる年代で発症していますので、「いつ誰がなってもおかしくない病気」と言えるでしょう。

潰瘍性大腸炎の症状とは??

基本的にはお腹が痛くなり、下痢や血便が多くなります。症状が重くなると、便に粘液や膿が混じったりしますが、軽い場合には下痢や単なる食あたりと勘違いされることもあります。炎症が強い時には、30分に一度の間隔でもよおすこともあるため、緊張やストレスによるおなかの緩みと勘違いされることもしばしばです。基本的に完治することがないため、おさまったり、悪化したりを繰り返すことになります。

Bさんの場合

ある朝Bさんがいつも通りトイレ入っていると、便器の中に、大量の出血がありました。
最初は「痔かな?」 と思って放っておいたたとのことなのですが、しばらく続くので受診したところ、大腸内視鏡という肛門からのカメラを入れる検査が行われ、潰瘍性大腸炎と診断されたそうです。そこで医師に、小さいころからおなかが緩く、下痢気味だったのも症状の一つだと初めて知らされたのでした。

治療方法はあるの?

潰瘍性大腸炎を完治させる治療はまだありませんが、炎症を抑える「薬物治療」は存在します。
潰瘍性大腸炎の内科的治療には主に以下のものがあります。

副腎皮質ステロイド薬

いわゆる「ステロイド剤」で、体内の炎症を抑えて症状を穏やかにします。
飲み薬と点滴の他に、直腸にじかに注入する方法もあります。中等から重症の患者さんに用いられ、腸の炎症を強力に抑えることができます。ただし、根本的な治療ではなくあくまで「炎症を一時的に抑えるだけ」の物です。

免疫調節薬

上記の副腎皮質ステロイド薬を使えない場合に用いる薬です。免疫反応を起きにくくするので腸の炎症を抑えることができる反面、風邪やインフルエンザなどの外敵と戦うという「免疫本来の機能も低下する」というデメリットもあり、他の病気にかかりやすくなったりします。

生物学的製剤

最先端のバイオテクノロジー技術によって生み出された製剤で、クローン病や関節リウマチの患者さんにも使用されている注射薬で、潰瘍性大腸炎でも効果が期待できるとされています。
ステロイド剤のように炎症を抑えるだけでなく、再発予防も期待できる薬剤です。

手術

基本的には薬での治療がメインですが、場合によっては「手術」も行われます。その場合、大腸をすべて摘出し、代わりに小腸を使って便を貯める袋を疑似的に作り、肛門につなぐ方法がとられます。人工肛門を作成しない分、以前の手術にくらべて患者の負担はぐっと減り、生活の質は飛躍的に向上されたといわれていますが、それでも手術となれば患者側の負担が甚大なのは言うまでもありません
「ひと口に「腹痛」といっても感じ方には個人差があります。潰瘍性大腸炎はほとんど知られていない病気のため、血便が出ても痔と勘違いしてしまったり、もともとおなかが弱く下痢しやすいタイプだと思い込んで放置したりしてしまう人もあり、初診の時点で症状が進行していることもしばしばです。年齢を問わずに1000人に1人の割合で発症し、また、年々増加傾向にあるので、決して珍しい病気ではありません。お腹に違和感があったら、迷わず検査を受けることをお勧めします。

予防と早期発見

潰瘍性大腸炎の治療において大切なのが「早期発見」です。
発見が遅れて重症化してしまうと、腎結石、膵炎、皮膚や目の異常などの合併症を併発し、
やがては「大腸がん」発症につながる場合もあります。

潰瘍性大腸炎を早期発見するためのポイントは以下の2つです。

ポイント1:便がだんだんゆるくなってきた
潰瘍性大腸炎の初期症状は「便が緩くなること」です。
理由もなくいつもより柔らかい、回数が多い便が続くようであれば注意してください。
必ずしも「水便」ではないため、このタイミングでは見過ごしてしまうこともあります。
さらに症状が進むと下痢症状がでたり血液・粘液・膿の混じった軟便がでたりするので、
少しでも便がおかしいと感じたら、流す前にかならず色や形など「便の性状」を確かめるようにしましょう。トイレ洗浄剤で水に色がつくタイプの物を使用していると、便の状態が分かりにくくなります。
その場合は、透明タイプを使用してください。

ポイント:2 けいれん性の腹痛がある
けいれん性の腹痛とは、腹が張った感じがあり、とつぜんキリキリと差し込むような痛みが繰り返し起こることをいいます。併せて頻回の下痢も同時にある場合は、潰瘍性大腸炎である確率が高いと考えていいでしょう。

まとめ

・潰瘍性大腸炎は、免疫系統の異常によっておこる
・完治する方法はないが、症状を抑える治療はある
・初期症状は、腹痛や下痢
・粘液や血液などが、便にまじることがある

「予防法の決定打はない」とされる潰瘍性大腸炎ですが、
日々自分の体調に関心を払うことで早期発見することができます。
トイレの際は便の状態を良く観察するようにしましょう。